自社株を売却した場合の税金について
更新日:2023/03/19
自社株を売却した場合において、売却益が生じたときは、売主が個人であれば所得税と住民税、法人であれば法人税が課されます。また、税務上の時価よりも低い価格で取引すると、思わぬ課税が生じてしまうことがあります。自社株を売却するときは、あらかじめ課税関係を把握しておくことが重要です。
目次
ここでは、自社株を売却した場合の税金について解説します。
1.個人から個人に売却
売却益が生じた場合
個人から個人へ自社株を売却した場合、売却益に対して所得税と住民税が課税されます。つまり、売却によって生じた利益が課税対象になるのであって、売却価格の全額が課税対象になるわけではありません。
個人から個人に自社株を売却した場合の基本的な計算式は以下の通りです。
【計算式】

上記の通り、売却価格から取得費を差し引いた売却益に対して所得税・住民税が課税されます。
なお、取得費とは、売却した自社株を取得した際にかかった費用のことです。例えば、売却した自社株を50万円で購入した場合、取得費は50万円になります。
なお、所得税・住民税は、自社株を売却した売主に対して課されます。自社株を取得した買主に課税は生じません。
売却損が生じた場合
売却価格が取得費よりも小さい場合には譲渡損となりますので、売主に対する所得税・住民税の課税は生じません。もちろん買主に対する課税も生じません。
譲渡損が発生した場合、他の一般株式などの譲渡益から控除することができます。例えば、自社株の売却によって150万円の譲渡損が生じたとしましょう。他の一般株式等の売却によって200万円の売却益がある場合、200万円の売却益から150万円の譲渡損を差し引けるので、残り50万円が課税対象になります。
なお、譲渡損を差し引けるのは、他の一般株式等の譲渡益の範囲内に限られます。譲渡益から差し引いた後に譲渡損が残ったとしても、他の事業所得や不動産所得から差し引くことはできません。
時価よりも低い価格で売却したら「贈与」が発生する
個人から個人へ、時価よりも低い価格で自社株を売却した場合、自社株を購入した買主個人に対して贈与税が課税されます。
贈与には、自分の財産を無償で相手に譲る行為のほかに、経済的な利益を無償で供与する行為も含まれます。したがって、売主が時価よりも低い価格で自社株を売却すると、売主から買主に対し、時価と実際の取引価格の差額については贈与したと認識する必要があります。
例えば、時価100の自社株を80で売却した場合、買主である個人に対し、時価と購入価格の差額である20について贈与税が課税されます。
【イメージ図】

贈与税は財産を無償で取得した場合に課される税金なので、有償で自社株を購入した場合は贈与税の課税対象にならないのが原則です。しかし、時価よりも低い価格で購入した場合、差額については経済的な利益を無償で供与されたと考えることになります。