金庫株取引について
更新日:2023/03/20
「金庫株」とは自己株式、「金庫株取引」とは自己株式の取得をいいます。
ここでは、金庫株取引と事業承継の関連性、メリット・デメリットについて解説します。
1.金庫株取引とは
株主が自社株を発行会社に対して売却する取引をいいます。

現経営者の手元から自社株はなくなるため、現経営者に相続が発生したとしても、この自己株式(金庫株)は遺産分割の対象にはなりません。そのため、事業承継の観点から、後継者にとっては有効な手法であると考えられます。
しかし、売主である現経営者に対する「みなし配当」がネックとなり、実務上は採用されるケースが多いとはいえません。
「みなし配当」とは
通常、個人が法人に対して自社株を売却した場合には、売却益に対して所得税・住民税(税率20.42%)が課税されます。
【計算式】

ただし、売主が自社株を発行会社に対して売却した場合には、売主が受け取った売却代金の一部が「実質的に配当である」という考え方に基づき、売主において「みなし配当」が発生します。具体例で確認してみましょう。
【具体例】

売主において発生したみなし配当(70)は売却損(▲40)と通算できず、配当所得として累進税率で所得税・住民税が課税されてしまうため、通常の売却益に対する分離課税(税率20.42%)よりも負担が大きくなってしまうケースが多いです。また、会社は個人に対して自社株の買取資金を支払う必要がありますので、会社の資金繰りについても注意が必要です。
株主は平等に扱う必要がある
株主は平等に扱う必要があるため、金庫株取引をするためには売主以外の株主に対し、金庫株取引を実行する事実や買取価格を通知する法的義務があります。また、金庫株取引を希望する株主が現れた場合、もともと予定していた売主と同じ条件で取引に応じる必要があります。