自社株の集約について
更新日:2023/03/23
世の中には、「自社株が分散してしまっていて会社の意思決定が円滑に進まない」といった悩みを抱えている会社が多く存在します。
目次
ここでは、自社株の集約について解説します。
1.株主の権利
中小企業では「大株主=代表取締役」というケースが多いですが、株主の立場と取締役の立場は分離して考えることができるため、自社株を持ったまま経営に関与しないこともできますし、自社株を持たずに代表取締役に就任することもできます。
自社株には1株につき1議決権が付与されており、株主が有する議決権の割合によって、会社の意思決定に対する影響力が変わってきます。
【株主の権利】

会社の意思決定を単独で掌握するためには、株主総会の「普通決議」が可能となる「50%超(2分の1超)」の議決権割合をキープすることが望ましいでしょう。役員の選任や役員報酬の決定、配当など、会社にとって重要な事項に関して単独で決議することができるためです。
さらに支配力を高めたい場合は、単独で株主総会の「特別決議」が可能となる「66.7%超(3分の2超)」の議決権割合をキープしましょう。定款変更や組織再編行為(重要な事業譲渡、合併など)など、会社にとって極めて重要な事項に関して決議することができるようになります。
事業承継の観点から見た「株主の権利」
代表取締役の地位の承継(=人的承継)と自社株の承継(=物的承継)の2つが完了してはじめて、「事業承継が完了した」といえます。特に「現経営者が大株主かつ代表取締役」である場合には、バランスよく進めていかないとスムーズにいきません。後継者には、「株主の権利」を考慮した上で、なるべく「50%超(2分の1超)」の議決権割合を持たせてあげることが望ましいでしょう。
2.自社株の分散リスク
「1.株主の権利」で確認したとおり、現経営者が「50%超(2分の超)」や「66.7%超(3分の2超)」の議決権割合を保有している限りにおいては、基本的に単独で会社の意思決定をすることが可能です。ただし、たとえ議決権割合が小さい少数株主であったとしても、会社の意思決定に影響を及ぼしてしまう場合があります。
スピーディーに意思決定できない場合がある
例えば、60%の議決権を現経営者が持っていて、1%の議決権を持った株主が40人いる会社をイメージしてみてください。現経営者は50%超の議決権を有していますので「普通決議」はできますが、66.7%超までは達していないので単独で「特別決議」はできません。そのため、定款変更や組織再編行為などを行う場合には少数株主のうち最低7人の同意を得る必要があります。
事務負担の増加
たった1株しか保有していなかったとしても、株主には違いありませんので、株主総会の開催にあたって招集通知をする必要があります。また、株主名簿の閲覧請求や株式の買取請求なども可能となりますので、少数株主から会社に対して「株主名簿を見せてほしい」と問い合わせがあった場合、対応せざるを得ません。
株主代表訴訟のリスク
経営陣の経営判断によって会社が損失を被った場合、株主は会社に代わって経営陣に対して責任を追及する「株主代表訴訟」を提起することができます。これは1株しか持っていない少数株主でも提起できます。