事業承継の節税方法|自社株の株価把握が対策の第一歩

建物の模型と虫眼鏡、株価チャートの資料が置かれた机と「事業承継の節税方法8選 自社株評価から始める最適解をわかりやすく解説」の記事タイトル

「事業承継でできるだけ税負担を抑えたいものの、どの方法が自社に合っているのかわからない」と悩む経営者の方も多いのではないでしょうか。

事業承継の節税対策には、生前贈与や事業承継税制、役員退職金の活用など、さまざまな方法があります。ただし、会社の状況や自社株の評価額によって適した方法は異なるため、単に節税効果だけで選ぶのはおすすめできません。

本記事では、大手税理士法人で数多くの事業承継に携わってきた税理士の監修のもと、事業承継で検討できる代表的な節税・承継方法をわかりやすく解説します。あわせて、節税対策で失敗しやすいポイントや、自社に合った方法を選ぶための考え方も紹介します。

株価・相続税を試算する(無料・5分)

事業承継の節税は何から考えればいいのか

節税方法を選ぶ前に、押さえておきたい考え方が2つあります。1つは自社株の評価額を知ること、もう1つは節税だけを優先しないことです。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

まずは自社株の評価額を把握する

事業承継の節税対策は、自社株の評価額を把握することから始めましょう。

自社株の評価額によって、株式を承継した際にかかる相続税や贈与税が変わるためです。評価額がわからなければ、それぞれの節税策によってどの程度の効果が見込めるのかも判断しにくくなります。

たとえば、生前贈与で株式を移す場合でも、株価が高い会社と低い会社では税負担が大きく異なります。

まず現在の株価を把握したうえで、どの方法が自社に適しているのかを比較・検討することが大切です。

節税だけを優先して対策を決めない

事業承継では、節税効果だけを基準に対策を決めるのは避けましょう。

税負担を抑えられても、後継者以外の家族への配慮が不足すれば、相続時に不公平感が生まれ、トラブルにつながる可能性があります。

また、株式の分散によって後継者が十分な議決権を確保できず、承継後の経営判断に支障が出るケースも考えられます。

事業承継では、税負担だけでなく、経営権を円滑に引き継げるか、家族間の公平性を保てるかまで含めて対策を検討することが重要です。

事業承継で使える節税・承継方法

事業承継では、税負担を抑える方法だけでなく、経営権の引き継ぎや後継者の資金負担まで含めて対策を検討することが重要です。

代表的な節税・承継対策には、以下のようなものがあります。

方法

概要

生前贈与

暦年贈与や相続時精算課税制度を活用し、生前に株式を後継者へ移転する

事業承継税制

一定の要件を満たすことで、非上場株式等にかかる贈与税・相続税の納税猶予を受ける

役員退職金の活用

役員退職金の支給によって利益や純資産が減少し、自社株の評価額が下がるケースがある

種類株式の活用

株式ごとに異なる権利を設定し、経営権と財産の承継を調整する

生命保険の活用

納税資金の準備に活用する

持株会社化・組織再編

持株会社の設立や組織再編により、事業承継しやすい体制を整える

それぞれの特徴や注意点について、詳しく見ていきましょう。

生前贈与(暦年贈与・相続時精算課税制度)

暦年課税では、年間110万円の基礎控除を活用しながら、複数年に分けて株式を贈与する方法があります。ただし、相続開始前の一定期間内の贈与財産は相続税の課税価格に加算される場合があるため、相続まで見据えた設計が必要です。

相続時精算課税制度では、年間110万円の基礎控除に加え、累計2,500万円までの特別控除を利用できます。基礎控除を超えて贈与した財産は、将来の相続時に相続財産へ加算して相続税を計算します。

どちらの制度が適しているかは、株価の変動見込みや承継までの残り年数によって変わります。なお、税率や非課税枠は改正される場合があるため、実行前に最新の制度内容を確認してください。

事業承継税制(特例措置)

事業承継税制は、一定の要件を満たした場合に、贈与税・相続税の納税が猶予され、その後一定の場合には猶予された税額が免除される制度です。

猶予を受けるには、後継者の要件や事業継続などの条件を満たす必要があります。要件を満たせなくなると猶予が打ち切られる場合もあるため、長期的な事業計画とあわせて検討することが重要です。

2026年10月時点で、特例承継計画の提出期限は2027年9月30日まで延長されています。一方で、特例措置の適用期限は2027年12月31日のままで、こちらは延長されていません。

計画の作成にあたっては認定経営革新等支援機関による指導・助言を受けたうえで、都道府県庁へ提出して確認を受ける必要があり、準備に数か月かかるケースもあります。期限に余裕があるうちに、早めに専門家へ相談しておくと安心です。

制度の詳細や最新の要件は、中小企業庁・経済産業省の公表情報で確認してください。

【関連記事】事業承継税制とは?適用要件と特例措置をわかりやすく解説

退職金の支給による株価引き下げ

事業承継の節税方法として、役員退職金を活用する方法もあります。

役員退職金を支給すると、その分だけ利益や純資産が圧縮され、株価が下がる効果が期待できます。株価が下がったタイミングで株式を移転すれば、税負担を抑えられる可能性があるでしょう。

ただし、退職金の支給時期や金額の設計を誤ると、かえって評価が不利になることもあります。実際に、当社が把握している事案では、退職金支給と前年赤字が重なったことで評価方法が変わり、相続税が3,200万円増加した事例もあります。

そのため、退職金による株価対策は、事前にシミュレーションしたうえで設計することが大切です。

種類株式の活用

種類株式とは、議決権や配当を受ける権利の内容が異なる株式のことです。議決権のない株式を後継者以外の家族に渡すなど、経営権と財産権を分けて承継できます。

これにより、後継者に経営権を集中させながら、他の家族にも資産を公平に分配しやすくなります。ただし、設計が複雑なため、専門家と相談しながら進めることをおすすめします。

【関連記事】黄金株とは?事業承継で使う拒否権付株式の仕組みとメリット・デメリット

生命保険の活用

生命保険は、事業承継時の納税資金を準備しながら、株価対策につなげられる場合があります。

たとえば、法人が加入する生命保険のなかには、保険料の一部または全部を損金算入できるものがあります。利益が圧縮されれば、会社の状況や自社株の評価方法によっては、株価の引き下げにつながる可能性があるでしょう。

ただし、生命保険に加入すれば必ず節税や株価引き下げにつながるわけではありません。保険料の税務上の取り扱いや解約時の返戻金、将来の利益への影響なども考慮する必要があります。

そのため、生命保険は単独で考えるのではなく、現在の自社株評価や事業承継のタイミングを踏まえ、ほかの株価対策とあわせて検討することが重要です。

持株会社化・組織再編

持株会社を設立し、事業会社の株式を持株会社に移す方法もあります。組織再編により、株式の保有関係や事業承継の体制を整理できる場合があります。

組織再編は効果が大きい一方、手続きが複雑で専門的な設計が必要です。実行前に、税務・法務の両面から慎重な検討が求められます。

【関連記事】持株会社とは?仕組み・メリットをわかりやすく解説【事業承継の視点つき】

複数手法を組み合わせた設計の考え方

事業承継では、複数の方法を組み合わせることで、より効果的に税負担を抑えられる場合があります。

たとえば、先代経営者への役員退職金の支給によって自社株の評価額が下がったタイミングで、後継者へ株式を贈与する方法が考えられます。

ただし、効果的な組み合わせや実施する順番は、自社株の評価額や会社の財務状況、後継者との関係などによって異なります。

一つの節税方法だけで判断せず、複数の選択肢について税負担や株価への影響をシミュレーションしたうえで、自社に合った承継方法を選ぶことが重要です。

節税対策で失敗しないための注意点【事例付き】

事業承継の節税対策では、自社株の評価額を把握し、適切なタイミングで対策を進めることが重要です。

対策を先延ばしにしたり、株価が下がったタイミングを逃したりすると、かえって税負担や資金負担が増えることがあります。

ここでは、実際の事例をもとに、節税対策で注意したいポイントを紹介します。

対策を先延ばしにして相続税が3,200万円増えたケース

ある会社では、会長がほぼすべての自社株を保有したまま、事業承継の対策を先延ばしにしていました。

その後、役員退職金の支給や赤字決算などが重なったことで株価の評価方法が変わり、自社株の評価額が5,600万円から1億6,300万円まで上昇。結果として、相続税の負担が3,200万円増加しました。

非上場株式の評価では、比準要素である配当・利益・純資産のうち直前期末で2つがゼロで、かつ直前々期末も2つ以上がゼロの場合などには「比準要素数1の会社」に該当し、通常とは異なる方法で評価されます。その結果、株価が大きく変動することがあります。

この事例のように、承継を先延ばしにしている間にも株価は変わります。早い段階から自社株の評価額を把握し、適切な承継時期を検討しておくことが重要です。

株価が下がったタイミングを逃し、追加資金が必要になったケース

別の会社では、特別償却の影響によって利益が減少し、一時的に自社株の評価額が下がっていました。

しかし、そのタイミングで株式の承継を進めなかったため、その後の決算で株価が再び上昇。結果として、承継時に2,000万円の追加資金を調達する必要が生じました。

自社株の評価額は、利益や純資産など会社の状況によって変動します。そのため、一度だけ評価して終わりにするのではなく、定期的に株価を確認し、承継に適したタイミングを逃さないことが大切です。

節税効果を正しく判断するには、まず自社株の評価額を知る

事業承継の節税対策を検討するなら、まず現在の自社株の評価額を把握することが重要です。

自社に合った節税方法を選ぶには、現在の株価を基準に、それぞれの対策によって税負担がどの程度変わるのかを比較する必要があります。

たとえば、生前贈与を検討する場合は、現在の株価をもとに贈与税がどの程度かかるのかを確認します。役員退職金を活用する場合も、支給によって株価がどの程度変わるのかを試算することで、対策の効果を判断しやすくなります。

株価を把握しないままでは、「どの対策が効果的なのか」「いつ実行すべきなのか」を具体的な金額で比較できません。

そのため、事業承継の節税対策は、自社株の現在価値を知ることから始まります。

まずは無料で自社株の目安を確認する

「かんたん株価試算」では、決算書などの数値をもとに、自社株の評価額を無料で試算できます。

直前期の決算書1期分と法人税申告書2期分を用意すれば、5分程度で試算可能です。2期連続で赤字の場合は、3期分の法人税申告書を使用します。

無料相談では、現在の株価だけでなく、株主ごとの評価額や今後10年間の株価推移シミュレーションも確認できます。

まずは自社株が現在どの程度の価値なのかを把握し、事業承継対策を考えるための判断材料として活用してみてください。

株価・相続税を試算する(無料・5分)

具体的な節税対策は専門家とシミュレーションする

無料の株価試算で現在地を把握したら、具体的な対策については専門家とシミュレーションすることが重要です。

簡易的な株価試算だけでは、実際の税務申告に必要な株価を算定したり、複数の節税策による効果を詳細に比較したりすることはできません。

「かんたん株価試算」では、大手税理士法人出身の税理士が、詳細な株価算定から事業承継対策のシミュレーションまでサポートしています。

「生前贈与なら税負担はいくらになるのか」「役員退職金を支給すると株価はどう変わるのか」など、対策ごとの効果を具体的な金額で比較したい場合は、専門家に相談したうえで自社に合った方法を検討しましょう。

事業承継の無料相談をする

事業承継の節税に関するよくある質問

最後に、事業承継の節税に関するよくある質問を紹介します。

Q.節税対策はいつから始めるべきですか?

株価は決算内容によって変動するため、早い段階から把握しておくことをおすすめします。承継の時期が具体的に決まっていない段階でも、現状の株価を知っておくことで、対策の選択肢が広がります。

Q.節税と資金準備、どちらを優先すべきですか?

どちらか一方ではなく、両方をあわせて検討することが望ましいです。節税だけを優先すると、後継者の資金負担や納税資金の準備が不足する場合があります。

まとめ

事業承継の税負担を抑える方法には、生前贈与や事業承継税制、役員退職金の活用など、さまざまな選択肢があります。どの方法が適しているかは会社の状況によって異なるため、まずは自社株の現在の評価額を把握することが重要です。

自社株の評価額は、利益や純資産などによって変動します。先ほど紹介した事例のように、対策を先延ばしにした結果、株価が上昇して想定以上の税負担が生じるケースもあります。

事業承継を考え始めたら、まずは「かんたん株価試算」で現在の株価を確認してみましょう。無料・5分程度で、自社株の評価額の目安を把握できます。

さらに具体的な対策を検討したい場合は、専門家による株価算定と節税シミュレーションを活用し、どの方法ならどの程度の効果が見込めるのかを比較したうえで、自社に合った承継方法を検討することが大切です。

株価・相続税を試算する(無料・5分)

事業承継の無料相談をする

清水敦也

著者

清水敦也

JIDAIOコンサルティング株式会社 代表取締役

  • 税理士(登録番号:138213)
  • M&Aシニアエキスパート

相続・事業承継、非上場株式の評価、M&Aに関する相談に対応する税理士。経営者が自社株の価値を知り、次の一歩を判断できるよう、複雑な制度を実務の視点から分かりやすく解説します。

出典・参考文献

関連記事

清水 敦也
清水 唯

事業承継の無料相談

初回30分無料 / 2回目以降5,000円(30分)

事業承継が強みな専門家が、あなたに寄り添って支援します。オンラインで無料相談を実施中。お気軽にご相談ください。

お電話での相談予約

相談予約

0120-103-301

受付時間:平日 9:30〜17:00

Webからのお申し込み

© JIDAIOコンサルティング株式会社